小学校から中学校へ入学してもっとも大きく変わるものは何でしょう?
学習塾を経営してきた私の答えは”算数が数学に代わること”です。
どの教科よりも答えを導くまでの「過程」が重要な教科でヒントやアドバイスが必要となる数学です。
このサイトでは学習塾経営の経験を活かし、多くのが生徒がつまづく・引っかかるポイントに重点を置いて、中学数学の考え方・導き方をアドバイスしていきます。
まず第1回目で紹介するのは①正負の計算(足し算・引き算・掛け算・割り算)についてです。
意外と正負の計算という数学のスタート時点でつまづく、マイナスの概念がすんなり入ってこないという生徒は多いですが、要点を掴んでしまえばスッと入ってくる範囲でもあります。
正負の計算が苦手という方は確認という意味もこめてぜひ一読下さい。
こんな方におすすめ
- 正負の足し算・引き算が苦手
- 正負の掛け算・割り算が苦手
- マイナスの入った計算が苦手
目次
正負の足し算・引き算
まずは、正負の足し算・引き算について解説していきます。
正負の計算ではじめに使われるのが数直線でしょう。
数直線での考え方は確かに解りやく、計算が苦手な方でも扱いやすいかと思います。
ただ、数直線では時間がかかりすぎてしまう・大きな数字の計算に向かないというデメリットがあり、いつまでも数直線を使った計算方法に頼ってはいられません。
頭の中で足し算・引き算を整理し、暗算またはひっ算で解いていけるようになる必要があります。
正負の足し算引き算は+軍vs-軍の人数勝負!
では、ここから数直線を使わず、式の整理と暗算(ひっ算)で解いていくコツを紹介していきます。
(これは以前、「新中学生がぶつかる数学の壁 正負の足し算・引き算」でも詳しく解説した内容になります。
余裕があればこちらの記事でも確認してみてください。)
それは、正負の足し算・引き算は”+軍と-軍の人数勝負”という考え方です。
問題を解きながら説明していきます。
$$3+5=8$$
最初の$3$は$+3$の$+$を省略しています。
$+$は赤$-$は青で色分けしていきます。
$(+)3+5$
この式では最初+軍に3人いてさらに+軍に援軍5人が加わったと考えます。
すると+軍は合計8人に。式にしてみると
$(+)3+5$
$=$$+(3+5)$ ←+軍が3人と5人
$=$$+(8)$ ←+軍が合計8人になった
$=$$8$ ←式を整理
となります。
では$-$の入った式も見ていきましょう。
$$3-5=-2$$
この式では3人の+軍と5人の-軍、どっちが何人多い?と考えます。
色分けしてみると
$(+)3$ $-5$
3人の+軍と5人の-軍…多いのは-軍なのでまず式に$-$を立てます。
$=$$-$
何人多いかは引き算で2人多いとわかります。
$=$$-$$(5-3)$
答えは-軍が2人多い。
$=$$-2$
$-$のみの式でも
$$-3-5=-8$$
$-3$ $-5$ ←色分け
$=$$-(3+5)$ ←-軍3人に5人の援軍が加わる
$=$$-8$ ←-軍が8人になった
となります。
ちょっと長い式でも試してみましょう。
$$3-5+4-7=-5$$
$(+)3$$-5$$+4$$-7$ ←色分け
$=$$+(3+4)$$-(5+7)$ ←+軍は3人と4人/-軍は5人と7人
$=$$(+)7$$-12$ ←+軍は計7人/-軍は12人
$=$$-(12-7)$ ←-軍の方が多い$(12-7)$人多い
$=$$-5$ ←-軍が5人多い
()のある式はまず()をはずす
ここからは()のついた式について解説していきます。
()のついた式は始めに”()をはずす”という作業を加えるだけで、その後はこれまでの+軍と-軍の人数勝負をするだけです。
()の外し方の詳しい説明は省きますが、まとめると次のようになります。
※()の外し方は正負の掛け算の説明で捕捉できるとも思いますので苦手な方は下記の【正負の掛け算・割り算】でもご確認下さい
ポイント
$$+(+1)=+1$$
$$+(-1)=-1$$
$$-(+1)=-1$$
$$-(-1)=+1$$
これ、もうすでに理解していて、問題なく()を外せる方は問題ありません。
いまいち()の外し方がわからない・なぜ-(-1)が+1になるの?と疑問に思う方は【正負の掛け算・割り算】でぜひ確認してみてください。
では実際に()のある式を解いていきましょう
$$3+(-5)-(-2)-(+4)=-4$$
$(+)3$$-5$$+2$$-4$ ←()を外し色分け
$=$$+(3+2)$$-(5+4)$ ←+軍は3人と2人/-軍は5人と4人
$=$$+5$$-9$ ←+軍は5人/-軍は9人
$=$$-(9-5)$ ←-軍の方が$(9-5)$人多い
$=$$-4$ ←-軍の方が4人多い
このように正負の足し算引き算では+と-をそれぞれまとまめてどっちが多いかを考えれば答えにたどり着けます。
正負の足し算引き算苦手だなという方はぜひこの考え方で問題を解いてみてください。
正負の掛け算・割り算
それではここからは正負の掛け算・割り算について解説していきます。
もしかしたら正負の足し算・引き算より、掛け算・割り算のほうが得意!という方は多いかもしれません。
どちらもルールのコツさえ掴めばスムーズに解けるもので、個人的にも掛け算割り算のルールのほうがスッと入ってきやすいかなと感じています。
ただ、掛け算・割り算も長い式になるとミスが増えたり、順番を間違えたりと不正解が多くなってきます。
まだ掛け算・割り算の計算に不安がある方はぜひ確認してみてください。
足し算・引き算と掛け算の違い
まず、ここでは足し算引き算と掛け算割り算の違いを考えていきます。
※かなり基礎的な考え方のアドバイスになるので”足し算引き算と掛け算割り算の違いはわかるよ!”という方は飛ばしてください。
例えば「$-2+(-2)=-4$足し算はマイナス…$-2×(-2)=4$掛け算はプラス…何で?」・「マイナス×マイナスはなんでプラスなの?」と思う方はぜひ読んでみてください。
足し算引き算というのは「もともとある数に別の数を加える」ということです。
■$-8+5=-3$ ←-軍8人に+軍5人を加えたら-軍が3人多い
■$-3-4=-7$ ←-軍3人に援軍4人加えたら-軍は7人になった
掛け算は「ある数の集まりをいくつか集める」ということです。
そしてそれを具体的に”お小遣い”で考えていきましょう。
「ある数」はひと月にもらえるお小遣い・「いくつか」はそのお小遣いを何か月もらったか です。
■$2×3=6$ ←2円のお小遣いを3か月もらったら合計6円
■$2×(-3)=-6$ ←2円のお小遣いを毎月もらっていて3か月前に戻るとその分のお小遣い6円分がなくなる
さて式の頭にマイナスがくる式の場合はテストの点数が悪く、お小遣いをもらうどころか罰金として払わなければいかなくなったと考えましょう。(あくまで数学の考え方のお話で罰金が悪いとかの問題はここでは置いておいてください。。)
■$-2×3=-6$ ←2円の罰金が3か月続くと6円のマイナス
■$-2×-3=6$ ←罰金2円が続いていて3か月前に戻ると6円がプラスになっている
以上が掛け算の考え方のアドバイスです。このお小遣いの考え方は今後習う比例・一次関数でも力を発揮してくれる考え方だと思っています。
()の外し方との関係
お気づきの方や知っているという方も多いかもしれませんが、この正負の掛け算の法則、正負の足し算・引き算の時の()の外し方に似ているのです。
そもそも()の前の符号には「1」が隠れていて()を外す際には掛け算をしているのです。
具体的に見ていきましょう。
■$-(+1)=-1$
⇒$-$$1×$$(+1)=-1$
■$+(-1)=-1$
⇒$+$$1×$$(-1)=-1$
■$-(-1)=1$
⇒$-$$1×$$(-1)=1$
()の外し方が苦手という方のヒントにもなるかもしれません。
掛け算・割り算は符号と数字を分けて考えよう
ここまで理解できたら正負の掛け算・割り算はマスターできたも同然です。
ここからは計算の流れを何度も練習して頭に、体に覚えさせましょう。
先ほどの説明のとおり、正負の掛け算をお小遣いで考えると…
お小遣い(+)×数か月(+)=お小遣い増える(+)
お小遣い(+)×数か月前(-)=お小遣い減る(-)
罰金(-)×数か月(+)=お小遣い減る(-)
罰金(-)×数か月前(-)=お小遣い増える(+)
というようにまず、式の符号によって答えの符号が決まります。数字は答えの符号が決まったら掛けていきます。
$-3×(-5)=$
$3×(-5)=+$ ←マイナス×マイナスなので答えの符号はプラス
$-3×(-5)=+(3×5)$ ←数字部分をかける
$=+(15)$ ←整理して
$=15$ ←答え
式が長くなってもやることは同じです。
$-2×(-3)×4$
$-2×(-3)×4=+$ ←マイナス×マイナス×プラス 最初のマイナス×マイナスでプラス/プラス×プラスになり答えの符号はプラス
$=+(2×3×4)$ ←あとは数字をかけて
$=+(24)$ ←整理して
$=24$ ←答え
以上のように符号→数字と分けて考えていきましょう。
次に正負の割り算ですが、数学では”割り算=掛け算(に直せる)”という考え方が重要になってきます。
割り算は掛け算
※「逆数」を習ってからの範囲になりますが、すぐ覚えられますし、重要なところなのでここで覚えてしまいましょう!
割り算はその数字を「逆数」にすることによって掛け算に直すことができます。
逆数とは分母と分子を入れ替えた数字のことをいいます。
$\frac{2}{3}$→$\frac{3}{2}$ となります。
整数にも逆数が存在します。
整数は分母に1が隠れている
$3$→$\frac{3}{1}$→$\frac{1}{3}$
割り算は逆数の掛け算に直すことができます。
$6÷2=3$ → $6×\frac{1}{2}=3$
言葉で考えると解りやすいかもしれません。
クッキーを2つに分けること(2で割る)と$\frac{1}{2}$にすること($\frac{1}{2}$をかける)は同じですよね。
符号についても同様です。マイナス÷マイナスはマイナス×マイナスと同じです。
では実際に計算をみてみましょう。
例えば$6÷(-2)$のような式であれば、符号はプラス×マイナスでマイナス・数字は$6÷2$で3と掛け算に直す必要はありませんね。暗算で計算できる時は暗算でOKです。
少し式が長くなると掛け算に直した方が、解り易くミスを減らすこともできます。
$$6÷2×3$$
この計算の答えは何でしょう。答えは9です。
これ以外と1と間違える方も多いんです。
先に後ろの$2×3$を先に計算し、$6÷6$としてしまうと1という答えになってしまいます。
掛け算割り算は左から計算するというルールがあり、上の誤答はこのルール違反によるものです。
このミスは掛け算・割り算の式を掛け算のみの式に直すことで回避することができます。
掛け算はどの順番で計算してもOKなんです。
例えば$9÷3×6$。この式の答えは18ですが、掛け算を先にしてしまうと$9÷18$となり答えは$\frac{1}{2}$となってしまいます。
これを掛け算のみの式に直すと$9×\frac{1}{3}×6$。
この場合は分母の3は分子の6と9どちらで約分しても正しい答えを導くことができます。
$3×\frac{1}{1}×6=18$ ←9と約分した場合
$9×\frac{1}{1}×2=18$ ←6と約分した場合
こういったミスを回避できることからも”割り算は掛け算”を意識して計算することをおすすめします。
単純なことですが、この考え方は今後習う単元にも活きてくると思います。
さいごに
以上、『学びは遊びの【中学数学】徹底解説/①正負の計算(足し算・引き算・掛け算・割り算)を攻略しよう』について解説いたしました。
正負の計算は数学の初歩ではありますが、重要な基礎となります。
また負の数や割り算の性質に理解しておくことは今後の授業にも大いに役立つと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございます。