2021年大相撲名古屋場所、千秋楽で大関・照ノ富士を全勝対決の末下した横綱・白鵬が7場所ぶり45回目の優勝を果たしました。
白鵬の6場所連続休場からの復活優勝、怪我や病気で番付を落としていた照ノ富士の復活横綱昇進劇に湧きました。
しかし、“またもや”横綱・白鵬の取り組みや振る舞いに批判の声が数多くあがりました。
なぜ白鵬の取り組みや振る舞いに批判の声が上がるのか、またそれはルール的にアウトなのかセーフなのか、問題点などを紹介していきます。
目次
批判を集めた横綱の張り手・かち上げ・奇襲・ガッツポーズ
相撲は日本の伝統的文化であり国技です。
そのため一般のスポーツとは異なり、作法や品格、武士道といった文化的側面を持っています。
特にその相撲における最高位・横綱にはそれ相応の品格が求められ、「横綱は横綱らしくある」ことを求められます。
こういった側面は美徳を重んじる日本人の誇れるべき部分だとも思いますが、一方で良し悪しを曖昧にしてしまっているようにも感じます。
具体的に横綱審議委員会は次のような行為に苦言を呈しています。
張り手・かち上げなどの荒々しい技
奇襲
ガッツポーズ・雄たけび
張り手・かち上げなどの荒々しい技
(※かち上げ…前腕を曲げ胸に構えた状態で相手にぶつかる。ひじ打ちに近い)
張り手・かち上げなどは白鵬や元横綱の朝青龍などが度々繰り出し、その都度議論されている問題です。
横綱らしさは、しっかりと組み合って相手を受け止める姿にあるようですね。
奇襲
奇襲については今場所、白鵬が対大関・正代戦で見せた取り組みが物議をかもしました。
白鵬は時間いっぱいになると後ずさりをし、俵ギリギリまで下がり腰を下ろしました。
白鵬は手をつくと、じりじり前進し、張り手を繰り出しました。
この行為に観客や対戦相手の正大も「?」といった感じでざわつきます。
結果、白鵬は正代を下しましたが、この奇襲に批判の声が多数上がりました。
ガッツポーズ・雄たけび
白鵬にとっては6連続休場明けの復活をかけた場所で、優勝への執念も相当なものがあったでしょう。
優勝が決まった白鵬は右手をブンと振りガッツポーズを見せ、その後も興奮冷めやらぬ様子で、雄たけびのような声をあげました。
この振る舞いにも“横綱らしさ”に欠けると批判の声が集まりました。
張り手・かち上げ・奇襲・ガッツポーズ どれもルール上問題なし
毎度物議をかもす張り手・かち上げはともに、技として存在しておりルール上禁止はされていません。
相撲の禁じ手
- 握りこぶしで殴る
- 頭髪をつかむ
- 目またはみぞおちなどの急所を突く
- 両耳を同時に両手のひらで張る
- 前立てみつをつかみ、また横から指を入れて引くこと
- ノドをつかむ
- 胸、腹をける
- 一指、二指を折り返すこと
4.は両手で同時に耳を張ることを禁止していますが、片手で頬を張ることは禁止されていません(アマチュアでは禁止)。
また握りこぶしで殴ることは禁止されていますが、かち上げも禁止されていません。
そして、白鵬が正代戦で見せた奇襲ももちろんこの禁じ手には触れておらず、禁止されたものではありません。
同様にガッツポーズも禁止されている行為ではありません。
相撲は力士の相撲道によって自主規制されている競技
先ほどの相撲の禁じ手を見て思うことはありませんか?
“これしか禁止されていないの?”
相撲の禁じ手は少なく、これに従うのであれば、ハイキックや関節技はルール上OKということになります。
相撲は力士たちの価値観やモラルによる自主規制に頼る競技だと言えるでしょう。
これはこれで美徳を重んじる日本の国技として、素晴らしいと感じる点ではあります。
しかし、一方で“横綱らしくない”VS“ルール上問題ない”といった議論を巻き起こす原因になっているとも感じます。
相撲の暗黙のルールを調べてみると「格下の力士が横綱相手に張り手をすることはタブー」というものがあります。
この言い回しだと横綱が張り手をするのはいいのでは?と思ってしまいますよね。
いやいや、そもそも張り手が美しくないのか…よくわからなくなってきますね。
品格を重んじる相撲は素晴らしいと思います。
しかし、この品格という客観的要素が様々な議論を巻き起こす原因となっているのも事実でしょう。
伝統的文化・スポーツ 二つの視点から見る相撲
相撲を日本の伝統文化と捉えるか、一つのスポーツとして捉えるかでこれらの行為の評価は変わってくるように感じます。
白鵬の行為を“ルールに乗っ取ってやってるんだから問題ない”と評価する側は相撲をスポーツとしてとらえている方に多いのではないでしょうか。
スポーツにおいて結果は重要視され、過程よりも結果を求めらることは往々にしてあります。
スポーツの結果を残す姿に感動させられる場面も多々あります。
実際私は、白鵬のガッツポーズには嫌悪感よりも感動を感じました。
6場所連続で休場し、この場所に賭ける白鵬の執念は凄まじかったでしょう。
私自身体育会系で学生時代は部活動にのめり込んでいました。
そんな私の目には白鵬の勝利への執念、気迫、ガッツポーズは美しいものに映りました。
私と同じく、感動を得た方も一定数いるのではないでしょうか。
一方で、相撲を日本の伝統文化という視点で見ている方にとっては、なりふり構わず張り手やかち上げを繰り出し、勝利の際にガッツポーズを見せる姿は“品格に欠ける”と映ってしまうでしょう。
自分自身こうして整理してみると、どちらかというと私はいちスポーツとして捉えているのかなと感じます。
ですが、品格の欠ける行為に憤りを感じる方たちの気持ちも理解できます。
相撲界の課題
スポーツが発展していく上で、相応の変化や規律は必要なように思います。
外国人力士の数も増え、これまでの歴史や精神の伝達、運営の統率などがより一層重要なものになってくるでしょう。
横綱の張り手・かち上げ・ガッツポーズなどは度々議論されますが、決定的な変化や判断は下されてきていないように思えます。
悪い言い方をすれば、変化させること、これまでの伝統を押し通すことの判断から逃げているようにも感じます。
確かにこの判断は決して簡単に下せるものではなく、一定数の批判の声もあがるでしょう。
これからの相撲界のためにも1つの答えを提示する必要もあるように感じています。
最後に
以上、『【相撲】暗黙のルールと「横綱らしさ」とは/張り手やかち上げはルール上禁止ではない』について紹介いたしました。
相撲は日本が世界に誇ることのできる文化の一つです。
そのため、大きな変革や決断は歴史ある伝統を壊してしまう可能性もあり、簡単に下せるものではないでしょう。
その難しさやプレッシャーの大きさも理解できます。
相撲に関わる全ての方々の力でこれからの相撲界の方向性を示していってもらいたいですね。
最後まで読んで頂きありがとうございます。